「なるほど」と思うこと。 [最近読んだ本]
なるほど,と思うことは以下のような場合でしょうか。
1)自分の思っていたこと以外(予想外)の指摘を受けた場合。
2)今まで疑問に思っていたことが,解決した(理解できた)場合。
いずれにしても,自分が”そのこと”について,興味や関心をもっている
ことが必要です。
すなわち,興味や関心のないものには,「なるほど」とは思わないこととなります。
私がつぎの本を読んで,「なるほど」と思ったと言うことは,この本の内容について
興味があったということを意味しています。
藤井聡:正々堂々と「公共事業の雇用創出効果」を論ぜよ-人のためにこそコンクリ-トを,
日刊建設工業新聞社,2010.6
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この本は,いつものように本屋をプラプラしている時,目にとまったもので,たまにはこんな本
を読んでみようと買ったものです。
同じ土木分野にいる者としては,過激に社会資本整備の必要性を強調しても逆効果では?
とも思いながら読み進めました。
本書は,先生が業界新聞に掲載された記事を再編集したものであり,その当時の背景を踏
まえて読む必要はあると感じました。以下,いつものように備忘録的な雑感。
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内需を拡大する産業としての建設業は,内需型の他の産業,農業や水産業,あるいは社会福祉
産業(医療や介護)などと何が異なるのか?。
公共事業とは,税金を投入するものである以上,納税者への説明責任を負う事業であり,納税者
のために実施される社会資本整備のことをいう。
民主党のスロ-ガンである「コンクリ-トから人へ」に対する批判として,感情的な論調での公共
事業有用論だとすれば,納税者の理解を得ることは困難ではないか?。
なぜならば,そのように国民が思うような素地が”公共事業”にはあったのは,事実だと思う。
それでもなお,公共事業の効果を論じるのであれば,他の産業と建設業との違いを述べることが
必要ではないか?と私は感じた。
私が漠然と持っている建設業と他の内需型産業との相違点は,ストック効果を持つか否かでは
ないかではと思う。他の産業では,フロー効果のみ,あるいはストック効果が少ないのでは?と
思うのですが・・・,間違っているかもしれません。
たとえば,高齢者の介護などを考えた場合,そのサ-ビスのための費用を利用者が支払うこと
以外の経済的利点は生じない。そのサ-ビスにより何かが残ることはない(感謝の気持ちは残る)。
一方,公共事業では,著者の述べている雇用創出効果を含むフロ-効果もあるが,その行為に
より社会資本が残る。ただ残るだけでなく,それを利用することによって更なる経済的利点が生ま
れ得る。
愚妻に,贈り物を相談したとき,食べ物を送ろうとする私に,消えてなくなるものよりも違うモノが
よいのでは?と助言される。厳密には,食べ物の脂肪として蓄積され得るので,消えてなくなるモノ
ではないような気もするが,愚妻の意見には逆らえない。「なるほど」。
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人の意見に同意した場合,「なるほど」と言う。
自分の考えに気づいた時,「なるほど」と思う。
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建設業に従事する者として,納税者に「なるほど」と思っていただけるように説明する。
たとえそれが,短期的には理解されない事象であっても。
公共事業は無駄だと思っている方々に無駄ではないモノもあると理解していただく場合の
「なるほど」は,比較的容易。なぜならば,意見をもっているのは,公共事業に対する興味
や関心があることと等値ゆえ。
一方,公共事業に興味(関心)がない方々に興味(関心)を持っていただいた上で,その
興味(関心)から発生する疑問に答えることで得られる「なるほど」は,容易ではない。
今の建設業には,興味(関心)すら得られていないのでは?と思うのは,悲観的な思考と,
読者からご批判を受けるかもしれません。
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この本を読んで,問題意識を持たなければ,「なるほど」と思えないことを理解できたような
気がします。
建設産業だけが雇用創出効果を持っている訳ではありません(そのことは,著者も述べて
いるのですが,本のタイトルがそうなので誤解を与えているかもしれません)が,フロ-効果
を強調しているように感じました。
乗数効果や所得分配効果など,景気対策や社会保障の一翼を担う公共事業が,納税者の
理解を得ながら遂行するために,我々,建設産業に従事する者が”なすべきこと”は何か?。
おそらく,「公共事業の受益者は,最終的には納税者である」との理解を得ることに尽きる
と,私は思う。
その受益には,必ずしも直接的な受益ではなく,間接的な受益という概念も含まれるという
説明がなければ,自分に直接関係のない公共事業は不要と判断されてもしかたがない?
短期的な受益が得られない事業もあるし,私の専門とする既設構造物の補修・補強のように
すでに受益を享受しており,事業の前後でその変化が感じられないような公共事業もある。
受益をフロ-効果で代表させることは,やはりムリがある。
長期的で間接的な受益にこそ,公共事業の意義があると思うのだが,どうでしょうか?
中国のような国では内需拡大も容易であろうが,成熟した日本のような社会では,単純に内需
拡大を図ることは難しいと思う(少子化を改善することが一番だと思うが・・・)。
少子化の遠因が,雇用不安や所得の伸び悩み,将来への漠然とした不安などであれば,
景気拡大は解決策となり得るが・・・。
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本書は,やや過激な発言とも思える内容もありますが,タイトルどおり正々堂々と公共事業の
必要性を論じています。
コラムとして記載されている「大阪のおばちゃん」は,関西人としてうなずけることも多く,
楽しく拝読できます。
「コンパクト・シティ」と「マイカ-」などの考察は,一読に値すると思います。
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著者の最近の書籍には,「列島強靱化論-日本復活5カ年計画」,文藝春秋,2011.5や
「公共事業が日本を救う」,文藝春秋,2010.10があります。
思想の是非や論調の好みは,読者の関心の程度によって異なると思いますが,土木技術者の
意見を堂々と論じることへの敬意や共感の念を込めて,近日中(アフタ-給料日?)に拝読しよ
うと思います。
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本日も最後までお読みいただきましたこと,感謝申し上げます。
ご無沙汰しております(^^;)
なるほど・・・ 社会資本のフロー&ストック奥が深いですねー
昔、高度経済成長の時代はフロー効果が3倍といわれた時が
あったと聞きましたが、最近はフロー効果は期待できないらしいですね。
私のいる田舎は、建設業に携わる人がいっぱいいますので、
もしかして倍率は高くなっているかもしれませんね・・・笑
最近は現場が忙しく、ブログも技術士の勉強も更新できずにいます。
本日は、ISOの外部審査+国〇交〇省様の安全パトロール・・・
思い切って残業なしで帰ってきました・・・ 明日が怖い・・・笑
by noppo (2011-07-20 21:37)
noppo様
いつも,ありがとうございます。
技術士の試験,最後は「受かるんだ!」との気持ちが大切。
私の場合,毎年この時期は,愚妻に字が汚いとブツクサ言われ
ながら,ひらがなと漢字の練習でした(笑)。
これといったことは出来ませんが,応援しています!
by メタボ技術士 (2011-07-26 22:40)